こんにちは。
【ふぇりちた】のかほ、こと河西美穂です。
かほの《着付け井戸端コラム》では着物や着付けについて、知らなくてもいいけど知っているとより楽しい!より快適!なお話を着付け馬鹿の視点から書いています。
へぇ、ふぅん、こんなことを考えているやつもいるんだなと軽い気持ちでお読みくださいね。
さて。記念すべき1回目は、おめでたい行事からネタをいただいていこうと思います。
そう、令和1年の即位礼正殿の儀です。
この儀式より、「着物と身体」の関係について迫ってみたいと思います。
目次
なぜ、重い装束を身に着けたまま、直立不動で立っていられるのか?
現在令和3年、代替わりをして早くも1年半が経ちました。
みなさま、即位礼正殿の儀はご覧になられましたでしょうか?
世が世ならば、わたくしのようなド庶民はちらとも拝見できない格式高い儀式ですが、今はいいですね、テレビで生中継です! ミーハーなわたくしはしっかりテレビに張り付いて、リアルタイムで拝見しておりましたよ。
平成のときはどうだったかな? まったく覚えていませんが、ご崩御後の自粛ムードで、まるっとおめでたいムードで能天気に楽しめる雰囲気ではありませんでした。いろいろとご意見もあるかと思いますが、わたくし個人としましては、生前譲位の良き点だったのではないかと思っております。
やはり、職業柄、どうしても気になるのはお召し物です。大変無礼ながら、殿方である天皇陛下のお召し物より、女性皇族の皆様のお召し物にうっとりしておりました。素敵ですね。めったに本物?はみられませんからね。一度は着付け体験してみたいですね(コロナが収まりましたら、十二単体験ツアーをいたしましょう!)。
このとき。
ふと思ったのですね。
「あんなに重い装束を身に着けて、あんなに良い姿勢で直立不動で立っていられるなんて、皇族の女性はスーパーサイヤ人か???」
平安装束の中でも正式な儀式用のものはとても重く、15キロ近くあるそうです。15キロといえば、お米1袋半。重いです。持っているとよたよたします。そんな重いものを身にまとったまま、長い儀式の間、ぴんと背筋を伸ばしたまま、微動だにもされない皇族のみなさま。
着なれていらっしゃるわけではないはずです。正式な装束をお召しになるのは本当に特別な儀式のときだけ。常日頃は洋装でいらっしゃいます。
慣れではない。なのに、慣れない(であろう衣装で)あの美しい姿勢を保っていられる。
「なんてすごいんだろう!!」
が。
見ているうちにふと思ったのです。
「いや、むしろ、逆ではないか?」
あのような美しい姿勢でいらっしゃるからこそ、あの重い衣装を身にまとったまま、微動だにしないでお立ちになっていられるのではないか。姿勢こそが、スーパーサイア人の秘訣なのではないか?
とうことで、「着物の重みと姿勢について」を検証してみました。
重いからこそ、姿勢が大切!ということ
なにはともあれ、まずはやってみる。
検証方法:実際に着物をたくさん羽織って、その重みのかかり方が姿勢によってどう変わるかを体感してみる。
わたくしは平安衣装を持っておりません。仕方ありませんので、手短なところで、手持ちの衣装……着物を重ねて着てみました。袷の着物を9枚です。
十二単衣を模するために羽織るだけで腰ひも等は使用しませんでした。
その状態がこちら。
画像ではわかりづらいかもしれませんが、しっかり9枚を羽織っています。
着物ってすごいですね、9枚でもへっちゃらで重ねて着ることができます。洋服ではこうはいきません。これは日本の気候にあった衣装としての特徴なんですよ(こちらのお話はまた別の機会に書きますね)。
……先に愚痴を言いますと、羽織るよりも終わった後にたたむほうが大変でした。たたんでもたたんでも部屋が片付かない……。
さて。
着物が1枚800~1000gほど。9枚で7~9キロです。女性皇族の皆様の衣装の重みに比べましたら全然軽いのですが……それでも十分に重いです(笑。15キロには及びませんが、検証には十分な重さということでご勘弁ください(あまりたくさんはたたみたくなったのよ。
結論からいいますと。
姿勢を正していないと、重みが身体に変にかかってしまって、かえってつらい。
簡単な図式にすると以下のようになります。
黒い線が身体。赤い線が重力のかかり方です。
良い姿勢をしていると、着物の重みはまっすぐ下にかかり、姿勢の維持にはあまり負担はかかりません。
しかし。猫背の場合には着物の重みはますます身体が曲がるようにかかってしまいます。弓なりになっている身体がより曲がるように力がかかるのです。結果、その重みに負けないようにと、筋肉に余計な力が必要になります。
腰が曲がるように力がかかりますから、腰も痛くなりそうですね。
10キロに満たない重さでもその違いを体感することができましたので、これよりももっと倍ほど重い平安衣装ともなりますと、もっと体感も違いがあるのではないかと思います。
つまり、
衣装が重いからこそ、姿勢を正している必要がある。
むしろ、正しているほうが身体が楽なのです。
女性皇族の皆様が美しい姿勢で立っていらした理由がこれでしょう。
美しくなっているから、長く美しくいられる。
美しくしてないと、むしろ、つらい。
平安衣装の仕組みが「自然を身体をまっすぐにしている」
実際に9枚の着物を羽織ってみて、もうひとつ、気が付いたことがあります。
平安衣装の特徴は「何枚も重ねる」こと以外に「後ろに長く引きずっている」という点があります。
重い着物を引きずって歩くと布と床の摩擦によって身体が後ろに引っ張られる感じになり、その力は主に肩にかかります。
肩が後ろに引かれる……そう、自然と身体がぴんと伸びるようになるのです。
普通の着物でもかなり引かれますので、十二単のようなもっと長くもっと重いものを引いて歩けば、いやでも背筋が伸びるのではないかと思います。
後ろに長く伸びた衣装に背筋を後ろにひかれるように姿勢を正したまま歩き、立ち位置へ。すると、自然と直立不動にふさわしい姿になります。また、立っている時にも軽く後ろに引っ張られるような感じなっているのかもしれません。そうすることで、よい姿勢を保つことを衣装が助けてくれているわけです。
なんともうまくできているなぁと感心します!
着物のデメリットをメリットに変えるのは着付け次第
平安衣装ほどではありませんが、着物は布の量が多いために重いです。着替えのために着物をもって歩きますと、その重みがよくわかります。
着物は着付けでその重みが負担にならないようになっているわけですが(《身体をケアする着物のお話会》で詳しくお話しています)、それでも、姿勢が崩れると、上のように重みが身体に負担をかけてしまいます。着物を着ている時には姿勢を正しているほうが楽ということです。
「着物を着ているとひどく疲れる」場合、二つのパターンがあります。
- 着付けに問題がある
- 姿勢に問題がある
姿勢次第で、身体に優しいはずの着物はかえって身体に負担をかけてしまうのです。
また、疲れてくると着物がとても重く感じられます。それもまた、疲労によって筋肉が身体を支えきれなくなり、姿勢が崩れ、上でご説明したような力のかかり具合が変化するからだと推察します。
逆に言えば、身体(筋肉)が疲れないように、着付け工夫すると疲れやすさが変わります。
着物は身体(姿勢)とのかかわりが深い衣装です。
ぜひ、《身体をケアする着付け》で身体により優しくより疲れづらく着物を着てみてくださいね。
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